金属組織に関する用語一覧
- ウッドマンステッテン組織
- 亜共析鋼を高温のγ相状態から長時間にわたってゆっくり冷却した際の、αがγの粒界とその劈開面に析出した微細な格子状の組織。
- オーステナイト
- γ鉄の固溶体につけた組織上の名称。
- 過熱組織
- 鉄鋼をいたずらに所定以上の高温度に加熱した場合に現れる組織。
- 過冷オーステナイト
- Ac1変態点以上に加熱して生じたオーステナイトが急冷されたため、Ar1変態点以下までもちたされたオーステナイトのこと。
- キャッシュ黒鉛
- 一次黒鉛、つまり融体から液相線にそって晶出した黒鉛のこと。
- 球状セメンタイト
- セメンタイトが球状化したものをいう。
- 球状炭化物
- 炭化物が球状となったものをいう。
- 共晶
- 1つの液体から2種の固体(成分金属)がある一定の割合で同時に析出してできた混合物とのこと。
- 共析晶
- 1つの固溶体から2種の固体(成分金属)がある一定の割合で同時に晶出してきた混合物のこと。
- 結晶粒界
- 溶解金属が凝固して結晶が成長するさいに、隣同士の成長面がたがいにつきあたればここに境界面が形成される。この境界面と検境平面との交線のこと。
- 樹枝状組織
- デンドライトのこと
- 晶出
- 融体から成分金属が凝固出現すること。
- 初晶
- 溶融金属(均一液体)から初めて出る結晶、すなわち晶出する結晶のこと。
- 初晶オーステナイト
- 融体から最初に晶出したオーステナイトのこと。
- 初晶セメンタイト
- 融体から最初に晶出したセメンタイトのこと。
- 初析晶
- 均一固溶体から初めて出る結晶、すなわち析出する結晶のこと。
- 初析セメンタイト
- オーステナイトから最初に析出するセメンタイト(Fe3C)のこと。
- 針状マルテンサイト
- 焼入れによってMs点で生じた針状のマルテンサイト組織。針状マルテンサイトは高炭素鋼を、高温度から焼入れした場合に現れる。焼入れ温度が低くなれば微細なマルテンサイト組織となる。
- 析出
- 固溶体から組織成分が分離出現すること。
- セメンタイト
- 鉄と炭素の化合物で、化学式は近似的にFe3Cで示される。
- 繊維状組織
- 繊維を束ねたような組織のことを繊維状組織という。地良く加工したままの金属板とか金属線とかは、みなこの繊維状組織を呈するものである。繊維状組織のものはこれを再結晶温度(鉄では450度)以上に加熱することによって、もとの標準組織に直すことが出来る。
- 線状組織
- 線状組織はリンを多く含む鋼に現れる偏析組織の一種である。リンの含有量の多い鋼においては、このためにフェライトとパーライトを加工の方向に沿って割拠させ、いちじるしく鋼材の横方向の強さを減ずる。線状組織の線状は加工作業により粒子が延伸された方向に向かうから、これにより鋼製品がいかなる作業によって造形されたかを知ることが出来る。
- 層状組織
- 層状を呈する組織を一般に層状組織といい、共晶または共析晶に多く現れる組織である。代表的なものでパーライトがある。
- 層状パーライト
- セメンタイトとフェライトが互層の状態になっている組織。
- ソルバイト
- マルテンサイトをやや高い温度に焼戻しをして粒状に析出成長したセメンタイトとフェライトの混合組織。
- 体心正方格子
- 正方体の8隅と体の中心にそれぞれ1つずつ原子が配置されており、αマルテンサイトはこれに属する。
- 体心立方格子
- 正立方体の8隅と体の中心にそれぞれ1つずつ原子が配置された空間格子であり、α鉄, γ鉄およびβマルテンサイトはこれに属する。
- 単結晶
- 資料全体を通じてただ一つの結晶軸を選び得るような結晶質の物体をいう。単結晶に対して小結晶の集合体を多結晶という。
- 柱状組織
- 結晶が柱状に発達した組織のこと。
- 転位
- 金属の結晶の変形は、ある結晶面の上を部分的にすべってできるのであって、このすべり面の上下で格子のくい違いができる。この位置のくるいのこと。
- デンドライト
- 樹枝状結晶のことをデンドライトという。樹枝状結晶を参照。
- トルースタイト
- マルテンサイトを焼戻ししたときに生ずる組織であり、光学顕微鏡では識別できないほど微細なフェライトとセメンタイトからなり、極めて腐食されやすい。
- パーライト
- オーステナイトの冷却に際し、Ar1変態で生じたフェライトとセメンタイトの層状組織。冷却速度の大小により層状組織に疎密を生ずる。光学顕微鏡で識別が困難なほど密な場合は、微細パーライトという。
- 微細パーライト
- 鋼を焼入れ温度から下部臨界冷却速度に近い速度で冷却したときAr'変態によって生ずる組織。焼入れ鋼に現れる「焼きむら」は主としてこの組織の存在による。
- プラウナイト
- 鉄-窒素系において窒素を固溶したα鉄(0.5%窒素)と鉄を固溶したFe4N(γ固溶体)との共析晶のこと。
- 偏析
- 溶融合金または固溶体合金が凝固する場合、最初に晶出または析出する部分と後から凝固する部分とは組成を異にするもので、最初に凝固した部分は1次晶で、最後に凝固した部分は溶融温度の低い共晶などで、不純物はみなこの部分に凝集している現象。
- フェライト
- α鉄固溶体およびδ鉄固溶体につけた組織上の名称。δ鉄の固溶体をδフェライトということもある。す
- ベイナイト
- オーステナイトを冷却したときに生ずる変態生成物の一つであり、パーライト生成温度とマルテンサイト生成温度との中間の温度範囲で生ずるもの。顕微鏡では、パーライト変態温度近くで生じたものは羽毛状、マルテンサイト生成温度近くで生じたものは、針状を示し、前者を上部ベイナイト、後者を下部ベイナイトという。
- 変態
- 温度を上昇または下降したためにある空間格子が他の空間格子に変化する現象で、変態の起こる温度を変態点という。
- 包晶
- 包晶反応によってできた組織のこと。包晶反応とは、ある合金の融点と他の合金の成分の固相とが作用して、新しい別種の固相を生ずる反応をいう。
- 包析
- 包析反応によって生じた組織のこと。包析反応とは包晶反応における融液の代わりに固溶体がきた時の反応をいう。
- マクロ組織
- 肉眼または虫眼鏡(倍率10以下)で観察した組織。結晶についていえば直径0.1mm以上の大きいものの分布状態、形状、大きさなどの観察である。
- マルテンサイト
- オーステナイトを急冷した場合に、Ms点以下の温度で変態して生ずる針状組織。元のオーステナイトと同じ化学組成をもつ体心正方晶または体心立方晶の固溶体。
マルテンサイトは、オーステナイトの塑性変形によって生ずることもある。
- マルテンサイト変態
- オーステナイト組織を急冷することでマルテンサイト組織に変化すること。
- ミクロ組織
- 顕微鏡で検査した組織をミクロ組織といい、結晶についていえば直径が10-2~10-5cm程度のものについての観察である。
- 面心立方格子
- 正方体の8隅と6面の中心にそれぞれ1つずつ原子が配列された空間格子。γ鉄は面心立方格子に属する。
- 網状セメンタイト
- 網状に析出しているセメンタイトのこと。
- 網状組織
- 固溶体が分裂して、2組成分となる場合、均一な甲組成分から乙組成分を析出する際に、乙組成分が甲組成分の結晶粒界に析出して網状となる組織のこと。
- 焼戻し組織
- 焼戻しによって得られる組織。トルースタイトおよびソルバイトが代表的な焼戻しである。
- 焼戻しマルテンサイト
- 焼戻しの第3段階直前(250℃程度)まで焼戻しされたマルテンサイト組織をいう。
- 初析トルースタイト
- 鋼の焼入れのさい、オーステナイトから析出したトルースタイトのこと。
- 初析フェライト
- オーステナイトから最初に析出するフェライト(地鉄)のこと。
- A0変態
- セメンタイトの磁気的変態のこと。この変態の起こる温度をA0変態点、またはセメンタイトのキュリーポイントという。
- A1変態
- 鋼の共析変態のことで、オーステナイト(固溶体)を加熱してやることによりフェライト+セメンタイト(パーライト)、フェライト+セメンタイトを冷却してやるとオーステナイトとなるような変態。この変態のおこる温度をA1変態点という。
- A3変態
- 鉄の同素変態の一つでα鉄(体心立方晶系)を加熱してやることによりγ鉄(面心立方晶系)、γ鉄を冷却してやることによりα鉄となるような変態のこと。
- Ar'変態
- 鋼の焼入れの際、急冷によって生ずるA3変態の遅滞状態の1つで、オーステナイトから直接結節状トルースタイトを変態。
- Ar''変態
- 鋼の焼入れの際、オーステナイトがマルテンサイトに変化する変態。
- CCT曲線
- 冷却変態曲線のことで、縦軸に温度、横軸に時間(対数目盛)をとり、各種冷却速度によるオーステナイトの変態開始および終了を図示したもの。
- TTT曲線
- 温度-時間変態曲線のこと。縦軸に温度、横軸に時間(対数目盛)をとって過冷オーステナイトの組織変態を示した曲線をいう。
- U曲線
- 丸棒の焼入れ断面硬度の変化。断面硬度の測定は90度または45度間隔の直径に沿ってしたがい、これを平均して曲線に表すことになっている。
- α固溶体
- α鉄が炭素などを固溶してできた固溶体。マルテンサイトはα固溶体の一種。
- α鉄
- 911℃以下の温度で安定な体心立方晶の純鉄。
- αマルテンサイト
- マルテンサイトの一種で、顕微鏡的には白色針状に表れる組織。
- βマルテンサイト
- マルテンサイトの一種で、顕微鏡的には黒色針状に現れる組織。低炭素鋼を焼入れした場合とか、または焼入れした鋼を100~200℃に焼戻ししたときに現れる組織である。
- γ固溶体
- γ鉄が炭素などを固溶してできた固溶体のこと。
- γ鉄
- 911℃から1392℃の温度範囲で安定な面心立方晶の純鉄。
- δ固溶体
- δ鉄が炭素等を固溶してできた固溶体。
- δ鉄
- 鉄の同素体で、A4変態点(1400℃)以上、溶融点に至るまでの鉄。